爺 てんから庵 閑話 滝場を越えたら居付きの岩魚が・・・
赤岩魚をさがして・・・、
滝場を越えたら居付きの岩魚が・・・
名栗川水系 狼窪
時期としては早く梅雨入り前なのに又も真夏日となろうこの日、奥武蔵タイプの赤岩魚(朱斑の岩魚)を探して探査に出かけた。 今回は、以前に山女魚の棲む下流域で赤岩魚を釣り上げた事があって、“上流の何処かに赤岩魚の棲む谷が在るはず。” と推察されたことから、名栗川水系の葉窪(葉谷)を目指したのである。 此の谷は、水線は約2kmで水系の支流本谷から分岐した細流で、下流域の約1kmは狭隘で急斜ゆえに堰堤は構築できず無い筈である。 しかし、こんな細流に岩魚は棲んで居るのか、棲めるのか。 遡り入ってみて確かめないことにはわからない。 |
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支流の本谷との水量比は2:1程、渓魚が棲むのか不安になる水量だ。 出合いの落ち込みに毛鈎を落としてみると、すかさず山女魚が喰いつく、 本流と行き来しているだろう。 暫くで、沢は両岸が岩場となって峡間となって行く手を塞いだ。 峡間の中には、中に三b程の直瀑が二本架かって直登はできない。 この三b滝の釜も、山女魚ばかりが毛鈎を追った。 本流の渓魚も此処で止められる筈だ。 喘登して滝を巻いて上に出ると、小滝が連なり、やがて穏やかな様相となった。 大石のゴーロだが、水量は心もとない“棲むのか…棲まぬのか…”不安は残る。 |
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居付くに相応しい落ち込みが在る。 “良いポイントだ…” ソット寄って毛鈎を落すと、すかさず“チョポッ”と山女魚様の出、 掛けてみると“小さいが岩魚”だ!!。 |
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大きさは五寸程、幼魚の二年魚。細流ゆえ育ちが遅いらしく小さい。 まだ、幼紋で朱斑は出ていなく顔つきはあどけない。 “岩魚は棲んでいた・・・。” “子供が居るってことは、当然に親が居る…何処の世界だって同じことだ” “下流で見た岩魚の故郷は此処だったのか・・・” 喜び昂じて煙草を一服。 |
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入渓してから二時間程も経った。 水量は少ないが、姿のよい三bほどの小滝が在った。 滝を見ながら珈琲タイムとした。 さて…、毛鈎を釜の抉れに沿って流すと気の毒な程に痩せた奴が掛かってきた。 既に数匹を掛けたが皆が痩せている、餌が少ないのだろう。 此の上で渓は二分した二俣。 水量比1.5:1程で左俣が本流、右俣を遡ると急斜に大岩の間を階段状に上り、 百b程も行くと、遂に岩下に伏流してしまった。 戻っていよいよ水量を減らした本谷の急斜の左俣を行く。 |
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暫くして岩壁の立つ峡間の悪場に突きあたった。 悪場は、周囲岩盤帯で水流は複雑に直角に屈曲している。 前衛に三b滝、中衛に五b二段滝、後衛に小滝が数段連なる。 前衛の三b滝を越えると、中衛の五b滝の滝壷へは如何にか降りられた。 |
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深く抉れた釜に毛鈎を落すとグイと引き込む。 “ヨシ!”としゃくれば橙の魚体が泳ぐ。 この細流でこの大きさは、まぁ立派。 大きさは約八寸、各親骨・腹部・斑紋に橙色を刷く定岩魚、朱斑は薄く橙。 気を良くして、岩裂を潜り、細木を掴んで難儀して悪場を抜け登った。 此の悪場で落差を整えたのか、 滝上は落差の低い落ち込みの続く穏やかな大石のゴーロ。 小型だが橙色を刷く定岩魚達は、落ち込み毎に居付いていた。 それもほんの100mの間。 水流は彼らの棲むに耐えぬ水量となり、 先で、切れ切れになって遂には伏流して消えてしまった。 |
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“アァ 至福の時・・・” 晴れた空、木々の緑、そして居付きの岩魚達と過す刻。 途中で仕入れたノンアルコールのビールに冷えた鉄火巻きの美味いこと美味いこと。 “これだから、探釣はこたえられんなァ” こうして五時間余りの岩魚探査行は終ったのだった。 平成二十六年 (2014) 初夏. |