てんから庵閑話 釣果を聞くにも礼儀が・・・、


釣果くにも礼儀が・・・大血川水系 本谷


 ある日ある爺が、いたく憤慨していたのでした。

 “いったい 如何したんです・・・?” と聞けば、
『この間、大血川で釣ってたらヨ、若けえアンチャンが 「釣れましたか? 釣れましたか?」
って聞きやがる、ケタ糞わりいったらありゃしねえがァ』 と云う。

 成る程、この問いはこの爺にはマズイ問いかけの言葉だ。
“それで何と答えました”
『アァ 山のようにナァ…』 と相手に“洟をヒッカケル”かの言い草で、答えたのだそうだ。

 (万一、大血川でこの爺に声を掛けた方が気分を害したかと心配に・・・そんなことはないか)
でも・・・ね。
知らぬ他人に聞く時には礼儀と文言を違えてはいけません。

 一癖ありそうな釣り人に迂闊に『釣ましたか?』 と声を掛けてはいけません。
特に、年端のいった老爺だったら、気を配りましょう。
どうしても釣果が聞きたかったら、『釣ましたか? 釣ましたか?』 と声を掛けることです。

 『・・・ましたか』 は向こう(魚)まかせの、受動的な言葉。
 『・・・ましたか』 は此方が(自分)仕掛けての、能動的な言葉。
なんですよねえ。
“魚が勝手に掛ってきたんじゃねエ、俺の釣り技で魚を釣ったのヨ” って思っているんですよねえ。

 この爺、界隈でかれこれ四十年も魚釣りをしていまして、面子と頑固の塊りのような爺なんです。
一緒に釣りに行っても、先に釣ると文句を云い、より沢山に釣ると臍が曲がります。
冨士登山の記念の木杖をついた年寄りの“爺”が釣りをしていたら充分に気をつけましょう。
なるべく近づかないのが無難です。

 それは、私の仲間の“爺”なんです、とっても好い人なんですがねぇ。
もしも出会ってお気を悪くされる失礼がありましたら、平にご容赦を・・・。

                                平成十七年(2006) 秋.


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