爺 てんから庵閑話 若葉の候の枯れ爺の欲情
若葉の候の枯れ爺の欲情
『俺、この頃は五月頃でも山ん中で 「センヅリい」 しなくなっちゃったなァ、 もう歳なんかなァ。』 飲み屋で焼酎を飲みながら某爺はしみじみと溜息まじりに云ったには、魂消た。 そう云えば 「青葉若葉の頃に釣り行していると、 急に情欲が昂じてきて釣竿を投げ捨てて大木をかき抱いて擦りつけてしまう。」 と何処かの釣本に書いてあった。 萌え出る自然界の生命力からであるらしい。 『するとすると・・・、一緒に出かけた時にときどき姿が見えなくなるが、 あの時は“それ”を致していたのかい?。』 『そういう時も多分、あったかもしれないなァ。』 『いやだよう、でも…私を今度の時に山ん中へ釣りに連れていっておくれよう。』 何時もは『客が来ない・・・ 年金が少ない・・・』 などと嘆き愚痴る後家の女将が云ったにも、 ひどく魂消た。 女は、幾つになっても女だ、魔性の者だ。 (追) 一説には男に相手にされぬ醜女の山ノ神の仕業である・・・とも云う。 平成21年(2009) 初夏. |