てんから庵閑話 川上の奴らのバカヤロー


川上らのバカヤロー・・・、

『夏休みに川で泳いでは、いけません。』
夏休み前に、校長先生から訓示があった。

『あにやぁ〜、あんでだよぉ〜。』
皆んなが、騒いだ。
『川の上流で疫痢の病人が出ました、うつるから川での水泳は禁止です。』
校長先生は続けた。

『あんだよ〜、またかよ〜。』
俺らは皆んな、騒いだ、がっかりした。
何時も何時も、夏になると川上の方の集落で、疫痢か赤痢の病人が出た。
そうすると、半月ぐらいは川には入れない、遊ぶことができないのだ。
俺らの学校では、疫痢や赤痢になったのを聞いたことがない。
よっぽど川上の集落の奴らは“悪いもん食ってるんだ”と思った。

次の日、皆んなで一時間も歩いて、上の集落の小学校へ行った。
『疫痢になんじゃねえよ、バカヤロォ〜!。』
『赤痢になんじゃねえど、バカヤロォ〜!。』
『もっとうんまいもん食え、チキショォ〜!。』
『腐ったもん食うんじゃねえど、チキショォ〜!。』
校門の前で口々に叫んで、パラッパラッと逃げた。



私達にとって、川で遊べないことは、とてつもないおお事だったのです。
そう云えば、近頃は疫痢や赤痢の話を聞きません。
もう根絶してしまった病いなのでしょうか・・・。
其の頃は、この病気で亡くなる人もいる伝染病でした。
病気になった人の棲む家は直ぐに判りました。消毒で家中が真っ白になっていました。

                            平成7年(1995) 記
                                  



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