てんから庵閑話 熊は恐ろし、見かけますると・・・、


ろし、見かけますると・・・、 大洞川水系 和名倉沢




彼は熊ではありません 可愛いカモシカです・・・・・・・・・・・・・・・・・           
 それは 夏の日の 和名倉沢でのことでした。

久しぶりに 和名倉の大滝までを釣り遡っての帰り途のことでした

其の日の大滝は 何時もとかわらずに雄雄しくて
途中 出逢う岩魚達は 皆 逞しく元気で 振り込む毛バリに飛びついたものでした

今日は 峪筋から杣道への僅かな踏み跡にも迷うこともなく来て
中間地点の目印の“山の神”をも通りすぎて そろそろ石津窪のあたりか
東向きのこの谷は 陽の翳るのが早く もう薄暗くもなるのです

窪の上手から 何やら“ボキボキ ベキベキ”と木々を踏みしめる音が
鹿かな カモシカかな・・・ いやいや彼らは音を立てて歩くようなことはしない筈
音は だんだんとに斜面を下って近づいて来た 木々を透かし見て 固まれば
“ゲゲッ 熊ダヨ 熊!!” 灰黒い塊がゆっくりと降りて来る 頭がデカイ!

“!!・・・!!” 兎にも角にも 山道を走り下る
100m程も駆けましたか 一度振り返りまして “ワーワーワー”と喚き叫び
ただ 唯 走りました
気が付けば なんと 対岸へ渡る丸木橋の処でありましたっけ。

「あぁ 恐ろし アナ恐ろし 熊を見かけますると・・・」

                                 平成8年(1996) 夏.

   
秩父山域には 沢山の 熊が棲んでいるのです 油断をしてはいけません。
    奥域でなくとも油断をしてはいけません 下流域の浦山にすら出るのですから
    熊避けの鈴は高らかに鳴らして歩きましょう。



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