てんから庵閑話 年上のクニちゃん


年上クニちゃ・・・、



 俺らの夏は、何時も何時も川へ泳ぎに行っていた。

 俺ら男は、手拭い褌を締めていた。
その手拭いには、必ず何処かのお店の名が染めてあった。
女は、ブルマーの様な白い木綿のパンツだった。
水に濡れると張り付いてお股が透けて見えた。

 『ヤダ〜、チンチンが出てるぅ。
クニちゃんが、俺を指さして笑った。
クニちゃんは、俺より三っ年上だった。
俺は、慌てて褌を締め直した。
別に恥ずかしくもなかった、普通の出来事だったはずだった。
でも、それからはあまり話しをしなくなった。

 それから幾年かの夏から、クニちゃんは泳がなくなった。
何時も皆んなが泳ぎ騒ぐのを、笑って見ていた。
ミッちゃんが教えてくれた。
『クニちゃんは、大人の記しがあったんだとょ。』
俺にはよく判らなかった。
でも“遊び仲間ではなくなったんだなぁ。”と思った。


 クニちゃんは、お母さんと二人暮しでした。
お母さんが亡くなるまで面倒をみて、お嫁にはいきませんでした。
もう、お婆さんです。
今日、庭の草むしりをしているクニちゃんを見て、想い出しました。
『綺麗になりますね。』と云ったら、
『ハイ。』と答えてくれました。

今も、あの頃のこと、覚えててるのだろいか。

                      平成7年(1995) 記.



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