爺 てんから庵閑話 アレェ水が濁ってきた・・・
アレレェ 水が濁ってきた・・・ 奥武蔵 某沢
世は、ゴールデンウィークの真っ只中だ。 若葉に誘われ、ホンダのスーパーカブに乗って、奥武蔵の小谷へと向った。 あまりの急坂にカブは『ストトン ストトン』とおかしげな音がした。 流れに沿う林道を、随分と奥に来たものだ。谿も源流の様相になってきた。 “オャ 此処で終に道は離れるのか、ヨシヨシ。” 水量は少なひけれど、渓相はマアマアだ。 いい具合の落ち込みが続く、型は小さくとも居付きの岩魚が潜んで居そうだ。 愛竿に、チョウチン仕掛けを結わえ毛バリを結んで流れを遡った。 随分と釣り上ったものだ。 なかなかに、岩魚は顔を出さぬ・・・。 “太古から棲まう奴は、余程に慎重なのだろう、さもありなんさもありなん。”と思った。 アレレェ!!、水が濁ってきた。 何故だ・・・、不思議だ・・・。 『オジサ〜ン、何か釣れた?』玉網を持った小僧が二人、行く手の岩陰から顔を出した。 目を凝らし透かし見れば、父さん母さんが居てバーベキューをやって居た。 『オウ!』と答えて、私は下流へと、戻り去った。 目が眩み、足はよろめいた。 離れた筈の林道は、暫くの上でまた戻り来て谿に沿っているのだった。 知らない谿に行く時は、たとえ里川であろうとも事まえに良く調べるべきだ。 平成17年(2005) 初夏. |