奥秩父の北の山を一つ越えると上州の神流川です。
神流川の源流の御巣鷹山の尾根に日航機は墜落したのだった。
昭和六十年の八月。
あれから、早くも二十年の時を経た。
当時、数年の間。
奥秩父山塊を巡る釣り人達は、あの源流域へは向わなかった。
誰が、言ひ出したことでもなかった・・・。
誰が、そうしようと提言したものでもなかった・・・。
しかし、釣り人達は。
カマガ沢や栃倉沢や大蛇倉沢や長戸沢へ分け入ることはなかった。
尊厳な自然の啓示でもあるような、気がした・・・。
其処に棲む自然や生き物達は、
皆んなで御霊を分ちあっているような、気がした・・・。
中に、鎮魂の情から、竿を折った釣り人も居た・・・。
二十年経った今はどうなのだろう。
時は規則正しく流れて、記憶の薄れつつある 今。
釣り人の世代も交代しての、今は・・・。
平成17年(2005) 夏.