爺 てんから庵閑話 竿を振り回したらいけないんだよ〜
おじさん、竿を振り回したらいけないんだよ〜
『おじさん! 竿を振り回したらいけないんだよ〜。』突然に後ろで声がした。 振り返ると、幼稚園児ぐらいの男の子が、怒った目をし睨みつけている。 “?・・・??。” 『竿を振り回すとね、ハリが刺さって危ないんだからぁ。』 若いお父さんが、飛んで来た。 『ハッくん、いいんだよ いいんだよ。』 『だってぇ おとうさん、あぶないから竿を振り回したらダメって言うじゃないかぁ。』 その日は奥武蔵の里川でテンカラを振っていたのだ。 近頃、レベルラインテンカラと言う言葉をよく聞く。 未だかって撚り糸の段繋ぎの馬素しか使ったことがない。 “他を知らずんば 己を語るに答はず・・・。” ウーム 硬い言葉だ。 九州のテンカラの達人、山蝉さんという翁から仕掛けと振り方を教えてもらい試していたのだ。 『そうだった僕、竿を振り回してはいけないんだったっけね。』 睨みつけているハッくんに答えた。 そして、毛バリを浮き釣りのように流れに永く長〜く流した。 『そうさぁ そういうふうに釣るんだよ、ねえ父さん。』 ハッくんは、とても満足そうに頷いた。 平成18年(2006) 春. |