てんから庵閑話 正統テンカラ逆さ毛バリ


正鵠の一冊 「正統 テンカラ逆さ毛バリ」


 私の毛バリ釣りにとって、正鵠の一冊である。

 私は、この右田政夫翁のこの本以外に真たる釣り教本を知らない。
たまに現代風な釣り書をパラパラとは見るのだが、
何か洋物風な感じが受け入れ難いのである。
また、どうも商業的な下心が見えるようで、好かない。
これは、毛鈎がフライフィッシングと雑交配してしまったからであろう。
在来の岩魚が、外来のブルックと交配してしまった様なものだ。
例えば、蓑毛は蓑毛でハックルとは呼び難い。

 テンカラ釣りの総てと釣りの心根についてを語るにいたるまで、
翁の言中にはある。

 この本は、つり人社から発行された復刻版である。
正統正版の「右田の逆さ毛バリ」は、
桐の箱に入れて押入れに仕舞い込んでしまった。
私の、宝である。

 随分と昔の頃、
お教えを乞いたくて後を追い回ったこともあった。
そして、何度かは翁の釣り様を見、何度かお教えをいただいたことがある。

所属していた釣り団体の関係から尊顔を拝す機会も何度かあって、
今も、この本を開く度に翁を思い出す。

 残念なのは、本来『てんから』であるはずを『テンカラ』としてしまったことである。
これは、発行社の意向からだと聞いた。

                     
   平成11年(1999) 春.

平成七年発刊の復刻本



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