赤岩魚 岩魚は何故装いが違う・・・。

秩父山塊の岩魚(地方亜種)は 二種

岩魚は 何故に装いが違う・・・) 


岩魚は秩父の山域では通称を秩父イワナと呼ばれていますが、その棲む流域によって何故にこうも装いが違うのだろうか。
実は、赤く装う岩魚はニ種類に大別されます。 厳密に云えば、二種に分けた中でも各谷毎に装いは違っています。

荒川水系の岩魚の種は言わずと知れてニッコウイワナ(S.pluvius)。 しかし その河川源流域に棲むは
岩魚達。
その
岩魚は赤紅色の着色斑点を体側に顕著に現すからの通り名です。
しかし 荒川水系の源流域の秩父山塊に定岩魚を探し求めて見れば、その装いは大きく分ければ2大別されることに気付くのです。
つまり、特徴ある地方亜種は二種類で、それに特徴の薄い亜種の定岩魚が棲んでいるのです。
厳密に云えば、大枠は二種であっても各水系毎、更には各谷毎に朱斑・白斑の色合いや大きさ等は違っています。

人々は、『こちらが“秩父岩魚”である。』 と 『いや こちらが本来の秩父の在来原種である。』 と、意見分かれて姦しいことなのです。
私(達)は、古えの通り名を借り得て、双方包めて“
岩魚” と称しているのです。
双方を混一して“秩父イワナ”と総称する向きもあるが、これは「大きな間違いである。」と結論付けています。

此処に【復刻
岩魚】より“岩魚絵”を許可を得て借用しました。 比べて ご覧いただきたい。

ニッコウイワナ(S.pluvius)
 体側部・背部に明確な白色斑点、頭頂部にまで小さな白色斑点(または紋様)があります。
 体の側線より下部の斑点は、黄色 または薄橙色の着色斑点がみられます。
 そして 源流域の定岩魚は、定番の 腹部・各鰭の親骨に黄色・橙色を刷き現します。
 パーマーク斑紋は明瞭に現出しています。



岩魚は、大枠2タイプ

奥武蔵タイプ〜秩父・奥武蔵山地に派生する流れに棲む岩魚。
奥秩父タイプ〜信州・甲州と国界の山塊を源とする流れに棲む岩魚。通称を“秩父イワナ”と呼ばれています。

岩魚(仮称〜奥武蔵タイプ
ニッコウイワナの顕著な地方亜種と想定されるタイプ.

 成魚は棲む環境にも因るが、成体で六寸から一尺程度で、成体でも繊細な印象を受けます。
 体側線より下の斑点は個々に明瞭で鮮やかな朱紅色を現しています。
 体側線上部の白色斑点は本来のpluviusに比べ幾分か小型化して現しますが明瞭です。
 頭部・背部の白色斑点は小さいが明瞭で、特に頭部はより小さく胡麻粒ほど。
 腹部・各鰭親骨に朱紅色を刷き鰭全体に濃色を刷き現す固体も見られます。
 パーマーク斑紋は個体差はありますが薄く現出しています(地域によっては濃く明瞭です)。
岩魚(仮称〜奥秩父タイプ
ヤマトイワナとの交雑種と想定され長年を経て固定化したと想定されるタイプ
.
 成魚は棲む環境にも因るが、成体で七寸から尺を越え、成体は豪放な印象を受けます。
 体側線より下の斑点はゴマを塗したように小さく濃橙色を現しています、全体が橙色に見えます。
 体側線上部の白色斑点は幼魚時は明瞭ですが成長するにつれ殆んど消えてしまいます。
 頭部・背部の白色斑点は成体では殆ど見られません。
 腹部・鰭親骨に濃橙色を刷き現します。
 パーマークは幼魚時は見られますが、成長するにつれ薄くなり成魚には殆んど見られません。

双方のタイプに共通する顕著な特徴は、鰭の親骨が朱紅色あるいは濃い橙色であり、婚姻期でも白色化しません。
(この特徴は秩父固有といってよい程で、秩父山塊以外の在来岩魚と称されるニッコウイワナの殆どが白色です)


此処に、二つに分けた其々の特徴ある赤岩魚の分布図を示してみました。(【復刻赤岩魚】より許可を得て借用)

・・・・ 仮称〜奥武蔵タイプの岩魚の見られる領域
仮称〜奥秩父タイプの岩魚の見られる領域




さて、面白くなってまいりました。 これも謎の浪漫です。
この2つのタイプの
岩魚達、混在してはいないようなのです。
どうも、大洞山〜雲取山〜三峰の稜線を境にしているようです。
もう一方の北方は、三宝山〜白泰山と続いてくる稜線です。
つまり、この稜線から西の信州・甲州寄りに棲むのが奥秩父タイプ、入川・滝川・大洞川の各水系のようですね。中津川水系は各支流群の源流域を見てもかなり複雑です。
そして、この稜線から東の奥武蔵寄りに棲むのが奥武蔵タイプ、大血川を境として安谷川・浦山川・横瀬川の各水系、そして奥武蔵の名栗川等の河川の源流域のようです。
入川・滝川・大洞川は岩魚の棲める範中である下限の荒川の上流部の大輪(今は秩父湖)で流れを合している。 とすれば、推論は幾つかでてきそうですね。

かってに 想像するならば 奥秩父
岩魚タイプは、ヤマトイワナ(S.japonicus)に類似している様、思えませんか・・・。その派生はヤマトイワナとの交雑からなのでしょうか。
このヤマトイワナとの交雑説には、幾つもの推論がされています。
例えば、真ノ沢に於いて信州との山稜を越えて交雑説・股ノ沢に於いて武田の金掘り衆が持ち込んだ説・井戸沢に於いて甲州の住人が持ち込んだ説・等々です。
・・・ 奥武蔵岩魚タイプは、朱紅斑点に確たる違いを現しますが、ニッコウイワナの特色をより顕著に表す様、思えませんか・・・。ニッコウイワナの地方亜種の継続なのでしょうか。
これは 迂闊に双方を同一種と判断して扱うには問題が有り過ぎるようですね。
 従って、移殖・養殖放流などは心しなければ後悔先に立たず “自然体系を侮蔑した大罪” となるやもしれません。

これからも、赤岩魚達との出逢いは、 謎と浪漫で楽しめそうではありませんか・・・。

エェッ 『俺は別の此処で こういうのを見たが、 違うではないか。』 って・・・。
当たり前ではありませんか、貴方は 色白だからと秋田の人と断定できますか。
人間にだって、色の黒いの白いの・禿たの白髪の・太ったの痩せたの、皆んな同じ黄色人種の日本人の筈です。
雄雌の違い・魚令の違い・環境の違い・季節の違い・体質の違い、諸々とありましょうが。 でも これは 釣り人の常識でしたね。
最も怖いのは、節操の無い人間様が、勝手な放流行為を行なった挙句の、亜種間・地方亜種間での交雑混乱でありましょう。



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